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第三章 を参照 クレプトマニアについて
私たちのほとんどは、自分が、本当のクレプトマニアとは認めたがらなかった。
自分の肉体や精神が、他の人達とは違うなどということを、喜んで認める人間が居るわけがない。
だから私たちが、普通の人のように買い物できるかもしれないと、意志の力に頼って来たからといって驚くことはない。
何とかなるだろうという考え、いつかは買い物を楽しむことが出来るようになるという、大きな妄想が病気の窃盗者に取り付いている。
この大きな妄想を、たくさんの病的窃盗者は、死の門口に立つまで、そうでなければ懲役に行ってさえも手放せないでいる。
私たちは、自分がクレプトマニアであることを、心の底から認めなくてはならないことを知った。
これが回復の第一ステップである。
自分は普通の人と同じだという、あるいは今にそうなるかもしれないという妄想をまず徹底的に打ち砕かなくてはならないのだ。
私たちクレプトマニアは、盗癖を抑制する力をなくした。
本物のクレプトマニアは、決して抑制を取り戻すことはない。
私たちも、自分は抑制を取り戻したと思ったことがあった。
けれど、そのちょっとした、あまり長くない中休みの後には、必ずもっとひどい状態がやってきて、切ない、なぜだかわからない落ち込みに苦
しまなければならなかった。
私たちのようなクレプトマニアは、進行性の病気にかかっているのだということを、私たち全員が一人残らず信じている。
少し長いめでみれば、私たちは悪くなることはあっても、決してよくなることはなかったのである。
私たちは、足をなくした人間に喩えることが出来る。
なくした足が、生えてこないのと同じように、私たちのようなクレプトマニアを、普通に買い物できるようにする方法はない。
私たちは、何度も盗癖を抑制しようとした。
少しはよくなったように思ったこともあったが、その後は必ずもっとひどくなった。
窃盗症をよく知る、医師たちの一致した意見では、クレプトマニアが、普通に買い物できるようになることは無いという。
科学は、いつかそれをやり遂げるかも知れないが、まだ実現していない。
私たちが何を言っても大勢の人達は自分を本物のクレプトマニアとは信じない。
そうして、思いつく限りの方法で、周りをだまし、やめようと思えば、いつでもやめれると言って、自分がクレプトマニアでないことを証明しようと
する。
盗癖を抑制する力をなくしている人が、回れ右をして、普通の人のように買い物するようになったら、私たちは、彼に脱帽しよう。
確かに私たちも、他の人達と同じ用に買い物しようとして、つらすぎるぐらいつらい日々をたっぷりと長い間繰り返した。
私たちがやったことを、いくつか書いてみよう
これがほしいから、これが取れそうだ、に変わる
盗むことが目的になる
毎日盗むようになる
今日こそは、盗らないと決めるが、失敗する
盗む量が増える
盗むための服装、バックを選ぶ
溜め込む
予備の予備が欲しくなる
部屋の中や、車の中にある物の、ほとんどが盗品
今日着ている物すべてが盗品
必要なものは盗めばいい、現金がほしければ売ればいい
テレビを観ても盗みたくなる
自分で決めた万引きルートがある
強いストレスや、自分ではどうにもならない問題、思いがけない出費が、トリガーになる
商品を手に取ると、盗るか盗らないか考える
友達や、知人に配る
集めたくなる
手口が雑になり、周りの目を気にしなくなる
(宣誓の儀式をするかしないか別にして)永遠に盗まないと誓う
一人ではであるかない
健康施設や、療養所に行く、精神病院に入ることを受け入れる
などなど、例をあげればきりがない。
私たちは、あなたがクレプトマニアだと、宣言したいわけではない。
だがあなたは、自分で簡単に診断が下せる。
これから、近くの店に行って、商品を手に取る。
店内を歩いてみる
いっぺんではなく、何度か繰り返してみる。
もし、あなたが自分に正直なら、結論が出るまでにそう長くはかからないはずである。
自分の状態を、はっきりとつかむ役にたつのだから、あなたが経験する不安やイライラには、値打ちがあるといえる。
証明の使用はないが、盗み始めの早いうちだったら私たちのほとんどは、盗みをやめれただろうと思う。
だが困ったことに、時間があるうちに、心底やめたいと思うクレプトマニアは、ほとんどいない。
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